1999-12-20
のっぺ(のっぺい、のっぺ汁)
のっぺ汁 世界3大スープのひとつ新潟の郷土料理、として有名なこの料理、まごう事無き新潟A級グルメものなんですが、 どうも由来が胡散臭いのでB級とさせて頂く。
というのは、私も最近知ったのですが
新潟郷土料理っちゅうのとはどうも違うらしいのだ。
あ~なんてこと??
のっぺの秘密
実はこののっぺ汁、元々は「のっぺい」(「濃餅」とか「能平」と書く)と呼ばれる,サトイモ等を用いたぬるっとした感触のある煮込み汁で、 昔から南は九州、北は東北までほぼ全国的に「郷土料理」としてあるのだった・・ 一体どこが元祖なのかは、今となっては不明。 茨城の神事に出るらしいし、戦国時代から陣中食として食べたという説もあるし、さらには平安時代から続く春日大社のおん祭りでも食べるそうです、本当にその祭りで平安時代から「のっぺ」を食していたかは不明だけどね。
だし汁にサトイモ(サトイモだけではなく、くずをひいたり、なめこを使う場合もある)と季節の食材を煮込むだけで、具は各家庭、地方、季節によってそれぞれ。ダシ汁は、いりこ、かつお、げそ、ほたて、しいたけ、等、ようするになんでも良い。季節の野菜の他 鳥を入れたり、かまぼこだったり、いくらを上に乗っけたり。
まぁ、ようするに日本人が昔から食べてた田舎料理であって、いわゆる「豚汁」とか「ごった煮」とか、「雑煮」のような呼び方と同列に考える方が正しいようで、会津の「こづゆ」などと違いちょっと郷土料理としてのステータスに乏しいのだった。
冷やすのが新潟風!?
「のっぺ 」と 「のっぺ汁」 は別のもので新潟のは のっぺ である、とか、くずをひいたものがのっぺ、ひいてないのはのっぺ汁だとか、分かったような分からないような説はいろいろあるようですが、案外どれもこれも根拠がはっきりしません。
わざわざ冷たくして食すのは「越後流」というのはどうも有力な学説のようですが、どっちかといえば『冷めてもおいしいように作っている』てぇ程度のことのようにも感じる。油で炒めてから作るけんちん汁は冷めると不味いよね。
冷たいのが「のっぺ」で、あったかいのが「のっぺ汁」 と呼ぶ、という説が 先日某全国紙の新聞に載ってたそうですが、これはちょっと眉唾です。恐らく取材をした相手の出身地、越後の一地方での呼び方、通説ではないのかと思われます。 寒い日は暖めたのっぺも食べるし、暖めた途端名前が替わるってのも解せないし、そもそもそんな話聞いたこと無いって越後人も結構多いし・・・まぁ、確かに冷たくすると、汁っ気が無くなってのっぺ汁とは呼びにくいわな。そんな見た目の所からきてるのかもしれませんが、一般論としてはあまりに根拠が無いものを大新聞が載せるってのはどうか?んなこたぁどうでもいいか!
他に、おめでたい席と、仏事では具や具の刻み方を変えたり、仏事はくずやイクラ(派手な赤いもの)を入れてはいけない、とか なにやらややこしい作法がある地方もあるそうですが、詳しい由来はわからないし、こういう地方では別にのっぺに限らず他の食い物にも決まりがありそうですよね。
なぜ新潟の郷土料理といわれているのか?
で、は、なんで、のっぺが新潟の郷土料理だとしてアナウンスされる事が多いのか?
東京ではけんちん汁は案外ポピュラーですがのっぺ汁と呼ばれる類の食べ物はあましお目にかかりません。
東京に在住する多県人のトップは群を抜いて新潟県人です。したがって新潟料理を出すお店(特に飲み屋)も多いです。そこで始めてのっぺを食べる東京の人も多い。そのへんに原因があるんでしょう。
さらに忘れていけない、田中角栄氏の大好物であったこと。
その時代、新幹線の開通決定による新潟への中央資本の流入に伴う人的流動(私もこれで父に連れられ新潟入りしたクチです)と情報の錯綜。
これで「のっぺ汁=新潟の郷土料理説布教作戦」の成功を見たのかもしれません。
のっぺ汁とけんちん汁との違い
似たような料理として「けんちん汁」があります。どー違うのよ?。 大阪あたりだと、「関西ではのっぺ汁、東京ではけんちん汁という」といった、「おでん」と「関東汁(かんとじる)」 のような関係で語られていたりしますが、これは間違い。はっきり言って全くの別物です。
けんちん汁ってのは鎌倉の坊さんが考えた精進料理が元祖なんだそうで、ってことは本来はダシにも具にも生き物は使わない一方、あぶらげ、豆腐等の植物性蛋白は欠かせないって代物です。 さらに大きな違いは、油で一旦具を炒める事(正式にはゴマ油で炒めるのが正しいそうです)
もちろん、お山の修行僧でもなければ肉入れたって構いませね。