2008-03-16
「朝日のあたる家」
子供のころ、ヤマハのエレクトーン教室というのに通っていた。
発表会がある、というので、演奏曲を決める時、練習曲の中で一番気に入っている曲は何か?と問われて、「朝日のあたる家」というのが好きだったのでそれにした。たしか小学校二年か三年の時だったと思う。
練習用にアレンジされたそれは、本来の三連譜調(ちゅうか三拍子?6/4? 6/8?)のものではなくて四拍子のわかりやすいロック調であり、もともとオルガンに合う曲だし、非常にかっこよかったのだ。
先生もどうやらこの曲には思い入れが強かったらしく、この曲を選んだ私を嬉しく思ってくれていたようだった。
で、その後この曲の歌詞を見た時(といっても歌詞が分かるようになったのは大學以降だが)の衝撃というか、なんというか、わかりますか?ライジングサンとかなんかカッコ良いとか思っていたら、えええ!!??って感じ。
先生さー、これ、子供に弾かせる曲じゃないでしょ!と思ったわけで。
私が弾いた元の曲はもちろんアニマルズのものであり、ビートルズばりの可愛らしい英国青年が曲が終わった後おじぎをするといった、絵にかいたようなグループサウンズなんだが、大元の曲はアメリカンソウルミュージックだ。演歌だ。
歌詞を私なりの解釈で訳してみよう。
There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it’s been the ruin of many young poor boys
And God I know I’m oneニューオーリンズに
朝日のあたる家と呼ばれる
どうしようもない奴らが屯す腐った場所がある
・・俺もそこの一員なんだけどなMy mother was a tailor
She sewed my new bluejeans
My father was a gamblin man
Down in New Orleans母さんは縫物が得意で
新しいジーンズを縫ってくれた
親父はニューオーリンズの
救いようのない八九三者Now the only thing a gambler needs
Is a suitcase and a trunk
And the only time that he’s satisfied
Is when he’s all drunk八九三者に必要なものは
スーツとトランク
唯一満たされるのは
呑んでるときだけOh mother tell your children
Not to do what I have done
To spend ther life in sin and misery
In the house of the Rising Sunおっかさん、子供らに言っといてくれ
俺のような人間にだけはなるなと
朝日のあたる家で
ただ日々を惨めに浪費するだけWith one foot on the platform
And the other foot on the train
I’m going back to New Orleans
To wear that ball and chain片足は駅のホーム
片足は列車に乗せる
俺はニューオーリンズに帰る
堕落と快楽に溺れるだけの日々 ただそのためにThere is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it’s been the ruin of many young poor boys
And God I know I’m oneニューオーリンズに
朝日のあたる家と呼ばれる
どうしようもない奴らが屯す腐った場所がある
・・・俺もそこの一員なんだけどよ
・・・ずずずずーんと重いし。暗いし。
house of the Rising Sun には婦館という意味があるらしい。
To wear that ball and chain ここを「刑務所に入る」の意味に捉えるか、快楽とデカダンスに溺れることも良しとする堕落した精神ととるかで微妙に意味が違ってくるんだが・・(私は後者だと思うよ。刑務所じゃなんだか奇麗にまとまりすぎる)。
そして、And God I know I’m one を、
「そして、神様、私には分かっていますとも。私も迷える子羊の一人です」
とでも訳すと奇麗なんだろうけど、嫌だね。曲中のボーカルのトーンも落ちてるし、これは「自嘲」の表現だと解釈したいね、40過ぎの親父としては。
「腐った場所ってわかってっけどさ。どういうわけか俺もそこの住民だしね」みたいな微妙な気分?でわないかと。
でもこれ、いろいろな世代が訳したらそれぞれ違ってきそうで面白いと思う。(ちなみに原曲事体に歌詞がいくつかバリエーションがあるそうだ)
子供用の童話仕立てだとこんな感じか?
ニューオーリンズに、朝日のあたる家と呼ばれる奇麗なおねぇさんや危ないお兄さんが屯す処があって、僕はそこらで育ったんだ。
母さんはよなべして、ジーパンを編んでくれた。
父さんはいつもぶらぶらしてて、男はスーツとカバンさえあれば良いんだ。とくだまいていた博打打ちの最低野郎です。でも、お酒を飲んでいる時だけは幸せそうだった。
父さんはよく母さんよくに言っていた。
「子供には俺みたいな大人にだけはなるなと言っておけ」って。
んでもってぇ。
これから列車に乗って、あの快楽と堕落の町、ニューオーリンズに帰ろうと思うんだ。だって僕の居場所はそこにしかないんだもん。まだ片足しか列車に乗っけてない優柔不断な僕だけど。
ああ、神様。僕は弱い人間です。
うう・・・なんだか悲しくなってきたぞ。
んなこた置いといて・・・やぱし、小学生が発表会で演る曲では無いよな。
さて、その数年後私が発表会で演じた曲は「宇宙のファンタジー(byEWF)」でした。素直な心で爆笑だ。そこには何の哲学もポリシーも無い。単に先生の趣味に踊らされていただけかもしんない。
朝日のあたる家