ゲド戦記 における 蘊奥

 カテゴリーに「シネマ」というのを作ったはいいもののろくに書いていない。
 基本、こういうネタに対して、好きなものの事しか書かないようにしている。好みもあるから。
 面白くなかったとか、そういうのは書かなければいいのだ。それが大人というものだろう。どうしても許せないならそれはそれで立場を明確にするのも大人として必要だとは思うが、微妙なものには触れないようにしたいと思っている。
 どんなに名画と言われているものだって、嫌いな人はいるし、超B級だって好きな人がいるからB級の名誉を得られるんだ。ET はいい映画だとは思うが、処刑ライダーの方が私は好きなように。
 で、ゲド戦記をテレビで見た。
 さすがジブリであった。こんな見所があるとは思わなかった。
 私的に一番の見所、というかこの作品の上で一番の「蘊奥」、と言える部分がこれだ。
 アシタカがタコじゃなくてクモの居城に駆けつけるシーンがあるだろう。終わりの方だ。
 やってきたアシタカに田中裕子じゃなくてクモがこう言うだろう?。
「よく来たな、アシタカ。 あしたかったぞ」
 ここだ。見事だった。実にさりげない。実に隙が無い。
 どう聞いても田中裕子りんは「会いたかったぞ」とは言っていない。 あ・し・た・か・っ・た と聞こえる。(と思う)
「ついにセルジオ越後の上をいったな、裕子」 
 思わず私はテレビに向かってつぶやいた。
 ばーかなーげこと田中裕子のファンでいて良かった、とこのときほど己の先見の明を自負したことは無い。あとのシーンは涙で霞んで見えなかった。というか風呂に入った。
 できればこの時点で舞台が割れて菅原文太と田中裕子りんが落ちるか、レッドカーペットが右の方に動いて行って左によろけて欲しかったが、それは贅沢な悩みと言えるだろうか。