昨日の夢

 こないだ、夢の地図なぞ書いたせいか、あれ以来定番の夢を見なくなってしまった。夢で見たことをあまりに明確に認識してしまうと、二度と同じ夢を見ることがなくなるのだろうか。

 で、昨日の夢

 私は工場の二階に住んでいるのだった。機械油の臭いにまみれて暮らしている。この夢の中で私は無職だった。何をしたのかわからないが人目を避けて暮らしているのだ。私はインターネットで職を探している。不採用の通知のメールがSPAMの如く届く。

 嫁は「しかたないよ、あんなことしちゃったんだから」と言う。私も「そうだな、しょうがないのかもな」と応える。
 工場に降りるとそこは暗くて油の匂いしかしない。そこには大きな機械があるのだが、いくら見つめても黒くて所々に鈍くてらてらと光っているのが分かるだけで、一体何を作る機械なのか分からない。時折遠くの方で電車が急なカーブで鳴らすレールの音が聞こえる。

 何か生暖かくて柔らかいものに躓きながら歩いていくと赤い釦らしきものがあった。それを押したか押さないかのうちに金属製のドアが閉まるような音とドアに鍵を閉める音がした。エンジンがかかる。多分私を乗せたトラックが走り出した音だと思った。

 しばらくすると音も無くトラックは止まり、また鍵の開く音がしてドアが開いた。とても寒い風が入ってきた。私は傍にあった毛布に包ろうとするのだが、横にいる誰かが毛布の端を踏みつけており、こちらに引っ張る事ができない。「なにしてんだ、早くしろよ」と、トラックの外から誰かが呼ぶ。私は寒いからここに居る、と応え、もう一度力を込めて毛布を引っ張った。すると何か生暖かい塊がくっついてきた。その塊を触ってみると「顔」のような感触をしている。もう一度よくよく触ってみると先のほうがいくつかに割れている。私は気持ち悪くなってその塊から逃れようとするのだが、押せば押し返してくる。さらに押すとそいつは私に襲い掛かってきた。ここで目が覚めた。

 私は息子の「足」を握り締めていた。毛布は息子に取られていた。

 窓がフルオープンになっており、下の方の階の住人が夜食を作ったのか、やけに油っぽい匂いが秋の冷たい風と共に吹き込んでいた。