2011-09-21
帝都の治水
東京の江東区に住んで何年目だろうか。これまで大きな水害を経験してないから、今回の台風は結構怖かった。なんせここは日本一有名なゼロメートル地帯だしね。
結果から言えば、なんてぇことは無かった。隅田川氾濫とかツィートされていたけど、川岸のテラスが水浸しになった程度。実は川岸のテラスってのは満潮時とかに屋形船が数台通ると波が被るくらいのもんで、その脇にはさらに高い堤防があるからテラスに降りなければ良い、程度のものだった。
ゼロメートル地帯とか言うけど、別に海抜がゼロメートルだってわけではなくて、実際はもっと低い。
江東区役所の前に水位がこれくらい、って目盛りが刻んであるポールが立っていて、平均海抜より低いのは皆知っている。キャサリン台風の時の水位はここ、ってそのポールに目印があるのだけど、どう見ても二階建てでも余裕で水没できる高さだったりする。(ただ、キャサリン当時の江東区の地面の高さが書いてないので…‥眉唾)
江東区の歴史というのは治水の歴史でもある。
江東区は東に荒川放水路、西に隅田川に挟まれた土地なのだが、区内に縦横無尽に流れる江戸時代から続く「運河」の水位はその川より低かったりする。江東区は海に川が注ぐ所であるがゆえ、川より低い運河ということは、海抜よりも低い所に溜まっている水溜りだ、ということだ。(江東区は水門とポンプでそんな運河を養っている)
それだけではない。
おそらく江東区で最も低い土地の一つに挙げられるであろう洲崎(東陽三丁目らへん)はその運河の水面よりはるかに低い。
江戸時代洲崎は出島のような感じで、遠浅の海岸に突き出していたのだが、長年の地盤沈下とその沖合に築かれた埋立地(とその土手)によって囲まれた(保護された)形で今に残るわけだ。
この地域を挟む川や海から水が来たらどうなるか。
中野坂上や板橋などがバブル期、平成になっても洪水、浸水に悩まされているが、あのあたりは水に浸かってもしばらくすれば物理的に水は掃けるのだ。海抜が数ミリでも高いければ高いところから低い所に水は流れる。だからこそバブル期まで治水後進地域だったと言える。復興までの時間を考えれば、自然に水が掃ける土地と人工的になんかせんと掃けない土地とでおそらく優先順位が決まっていたんではないかな、と思われる。で、バブル期以降ようやく山の手には巨大な貯水槽が地下に作られたので、神田川の氾濫も少なくなった。
江東区のように海抜以下の土地は一度水に浸ったら、何時迄経っても水は引かないのだ。水は溜まったまんまだ。ポンプで吸い出す以外無いのだね。地盤は緩いというか、元々海だし。地下に貯水神殿を作れる山の手と違って、この辺はどうしようもない。だから堤防を高くする、水路や街の至る所に水門がある。東洋のオランダ状態。江東区の中心部から海に向かうと基本上り坂である。新潟のように海沿いに「砂丘の丘」がある、というのとは違う。そもそももともと海であった場所だし、全て埋立地であるのだから。ただダラダラと微妙な上り道が続いた挙句海に出る。
ただ注意深く街を見てみると、所々元々運河だったところを埋め立てたところが「土手」のように高くなっている。単に運河の頃の土手をそのまま残しただけとも思えるが、運河は埋め立ててしまったわけで水はもう流れていない場所も高いまま残してある。バリアフリーとか考えたら平らにすべきなんだが(笑)あえて平にせず、当時の橋の欄干やら石碑やらを置いてある。で、その両岸で地面の高さが違っていたりする場所も多い。一方は土手の高さのまま地面も高くしている。一方は低いままだったりする。この辺りを深読みすると治水が見えてくるのだ。
まぁ実際低くなってしまった土地に昔から住んでいる人に対して「治水の面から危ないから高くするから皆どけろ」たって無理だ。新しい土地の方を高くするしか無いから結果的にこうなったのだけなんだとも思えるのだけど。
今私が住んでいるところは比較的新しい土地なので、地面は(海抜は)高い位置にある。洪水には強いが、その代わし新しい埋立地ゆえ地震の際には液状化が激しい。一長一短。
閑話休題***(上記・詳細未検証故よろ)
もう台風シーズンは終わりとは思うけど、街が洪水、浸水したからと言って興味本位でっズブズブ水浸しの街を歩くのは控えたほうが良い。
田舎の洪水は水は綺麗(でも危険)だが、都会の洪水ははっきりいって、汚すぎる。
水は低い所に流れる。都会(特に平地、海の近くの海抜の低い都市)の場合、まず下水に流れ込む。下水管やらなにやらがいっぱい一杯になってからマンホールを突き破って地上に溢れ出すのだ。味噌糞一緒の水が地上に出てきている、という点、お忘れなく。特に大都市は下水道率が高い。洪水の後暑い日が続いたら、時が時なら疫病が流行るのだ。洪水のなかを歩いた後の服って「クンカクンカするとかなり臭い(それもひでー匂い)」ですよ。ずぶ濡れで帰っていたら着ていた服を脱がずに台所に近づくのは避けたほうが良い。特に小さな子供がいる家庭の場合。服は別個に洗い、さっさと風呂に入ったほうがいいと思う。まじで。放射能を気にするのも正しいけど、案外こういうのってちゃんとしとかんと。
あと、マンホールを突き破って水が吹き出す際に、マンホールの蓋がズレる。洪水で足場が見えない道路を歩いていて、そのまま「穴に落ちる」可能性だってある。川の氾濫のように先に道に水が流れてきて下水に流れこむような場合は良い(上から水圧がかかるから)が、先に下水から水が吹き出しているような時は、
かなりやばいぞ。
あの穴に落ちて酷い目に合う人も結構いるのだから。
特に東北の方、先般の地震は海から水が来たから下水より先に上から水が被ったと思われるので、マンホールがどうとかは気にするまでも無かったと思う。しかし今度の台風による水は上からでな無く地下からやってくる可能性もある。うっかり水浸しの道をあるのは危険だ。それに今度は(海からではなく)山から水はやってくる。性質が違うので、本当に注意下さい。