エリジウム

最近仕事が忙しくてさっぱり映画とか見てないんだけど、遅ればせながら「エリジウム」を見た。マッド・ディモンとジョディー・フォスターが出演、大好きな「第9地区」の監督作品てことでかなり期待してたんだが。

見ててつまらないわけではない。結構面白いと思うよ。個人的にはいろいろ気になるのだ(以下ネタバレ注意)

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なんつーかさぁ、ジョディー・フォスターが早く消えすぎ。

主演がマット・デイモンってことでクライマックスはアクションで!って配給側の無理強いがあったに違いない?。

あんなありえないほどのバカと戦って勝利ってんじゃちょっとなぁ。最後のブリッジからバカが落下してってのもスターウォーズを彷彿とさせて惚れ惚れするくらい雑だし。

出来ればあの馬鹿は設計者同様ジョディーの策略によって無残な最後を遂げて頂きたかった。で最後はジョディーが使用人として使ってたアンドロイドに(システムリブートによって)手のひら返しで逮捕されるっつーラストのほうがスマートだと思うんだけど。
……これじゃ小奇麗すぎるか。

しかしマットとの絡み無しでジョディーさいなら~とかマジありえんじゃろ?。嘘みたいだ。スケジュールが合わなかったのかね。

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まぁ他にも面白いとことかなんじゃこりゃってのがあるけど、

そんなことよりも

だ。

やっぱもうこういう世界観でのSFっていい加減やめたほうが良いんじゃないのかな。
こういう世界観てのは

2154年、超富裕層は、大気汚染や人口爆発により生活環境が悪化した地球から離れて、衛星軌道上に建造されたスタンフォード・トーラス型スペースコロニー[5]「エリジウム」で暮らしている。アーマダイン社が設計・施工したエリジウムでは、高度な科学技術によって市民は傷病から解放され、水と緑にあふれた理想郷での暮らしを享受できる。それは地球上で暮らす貧しい人々の憧れとなっている。 一方、荒廃してスラム化した地上では、人々は過酷な労働とエリジウムより遥かに制約の多い医療やドロイドによる厳しい監視に喘いでいる。市民はエリジウムの生活に憧れ、密航を企てる者もいるが、エリジウムはドロイドや犯罪者崩れの傭兵を配して侵入者の排除に努めている。@フロム ウィキ

ていうがん。いわゆる『超富裕層のユートピア』と『搾取される側・労働者のディストピア』との対立という構図。ユートピアたる人工衛星エリジウムは不老不死の絵に描いたようなお花畑のユートピア。地球はと言えば戦後の強制労働ばりの超ブラック企業の労働者かもしくは犯罪者ばかりのステレオタイプ。こういうのは「メトロポリス」で既に十分語り尽くされたはずだ。

こういう世界観てのはそこに至るまでの過程が劇中でしっかり説明されていないと素直に感情移入が出来ない。この落差が「対異星人によるもの」の結果だったり「アンドロイド、ロボット、コンピュータの暴走による」結果、という形ならまだ解る。

が、冒頭からいきなし「未来の人類は富裕層と貧乏人との超超落差社会であった。ほんでもってここに一人の貧乏人のヒーローが現れた。彼が富裕層の搾取に楔を打つ」って人類同士でドンパチやってんだわ、相変わらずな。こんなん「蟹工船」と一緒じゃないか。一体未来の人類はどんだけ馬鹿か。エリジウムにしても

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そもそもああも簡単に労働者を使い捨てで見殺しにして「生産性が落ちてる」とか社長が責められてる。なんかやってることが矛盾しているだろ?エリジウムに連れてきゃ一瞬で治るんだったらさ、さっさと治してやってまたこき使えばいいじゃんよ。よ?もうね、あほかと。

だいたいあの富裕層は「何を持って富裕に至る」んだろうか。あれじゃ地球でものは売れないぞ。モノ売ってなさそうだし、泥棒ばっかだし。もの買うのが富裕層ばかりでは経済が成り立たないだろう。主人公が作ってるのもアンドロイドだ。そのアンドロイドはなにか生産しているんだろうかと思えばなにやら警察かわりに働いているだけで生産性ゼロだ。自分らを監視するロボコップを作ってんだ。こんなんでよく暴動が起こらないもんだ。

劇中どこ見ても店、商品が見当たらない。いやあったのかもしれないが、とりあえず3回DVDを見たんだが記憶に無い。生活感ゼロ。てか何食って動いてたんだこいつら。(そういえば地球のエージェントのあの脳筋バカがなんか小汚い真っ黒な肉焼いてたな。結局食ってなかったけど)

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とはいえ最近話題(となりつつコケまくった)映画にこういうタイプが結構ある。

「タイム」しかり、「トータルリコール」のリニューアル版しかり。もうお腹いっぱいだべさ。まだ最終戦争後のカオスで北斗の拳的世界、っ方がわかりやすい。(わかりやすいからってもう今更マッドマックスの焼き直しは見たくはないけど)

ここのところ、反共、反独裁、反管理社会SF映画ってめっきり見なくなった。「1984」とか「華氏451度」とか、ジョージ・ルーカスのデビュー作「THX 1138」もそうだし、コメディだけど「スリーパー」とか。最近見ないでしょこういうの。前提となる世界観への感情移入が今となってはやりにくくなってきた。そんな社会は完成前に自ら壊れてしまってる事例が多すぎるからね。お隣の上の方では相変わらず頑張っておられるようだが、SFでやる必要が見えなくなったってことだろう。

同様に「エリジウム」のようなテーマのSFもいい加減感情移入出来ない人が増えてるだろうし、今後は消えていくんじゃないかね。少なくともこういったマジモンのSFでやる必要は無かったんでは。パロディや歴史物でやるとか(実際第9地区はあれ、SFパロディだ)、実際にはまだこういった落差社会もあるのだからドキュメンタリーでやったほうが直接的説得力があって良いと思う。